病めど病まれど



ダークシャドウには確かに理性がある。けれど性格も意思も何も全て本来備わっていなかったもので人間含む一般的な生物と比べて安定感はない。故に一度でもたがが外れてしまえば──

「ヒャハハハハッ!」

ご覧の通り。

「鳴けよ喚けよ三下がァ! もっともっと踊ってこのオレ様を楽しませろォォ!」

扉を開ければ戦場が待ち構えていた。双眸を赤々と燃やして豪剣を振るうのはダークアイクと概ね予想通りの相手。対峙しているのはダークリンクやダークマルスといった剣士達──彼らは感化されて気を狂わせていないようだがいつ糸が切れてしまうものか分からない。

「ふふふ。うっとりしちゃうねぇ……そんな風に求められたら」

ダークマルスは熱っぽい息を吐き出して頬に手を添え恍惚と目を細めている。

「頭飛んでんのはあいつだけか?」
「ようやくのお出ましか」

スピカが隣に並んで質問を投げ掛けると気付いたダークリンクは口端に滲んだ血を手の甲で拭う。

「ゆっくり飯も食えやしねえ」
そそのかしたのは誰だ」

言えばダークリンクは目を逸らした。

「ったく」

スピカが溜め息をついて視線を向けた先でダークアイクは床を抉る勢いで豪剣を振り下ろし、腰に据えて高らかに笑いながら駆け出す。

「もっと……もっともっともっと!」

鬼か悪魔か邪に満ちた表情を浮かべて風の音。

「血を寄越せ肉塊どもォォォ!」
 
 
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