病めど病まれど
慣れとは恐ろしいものである。
「リーダーは……いつ、死ぬんですか……?」
通路をゆっくりと歩いていたその時だった。
「心臓が止まって……呼吸音が失せて……周りの誰も……認識出来なくなって……僕たちの名前を呼ばなくなるのは、いつですか……?」
気配も感じさせないままいつの間にか背後に立っていたその人は服の袖を引いて止めた。きっと幾分か前まで酷く乱していたのであろう呼吸を未だほんの少し跳ねながら表情に暗く影を差して訊ねるのはダークロイ。スピカは横目でちらりと見て小さく息を吐き出すと。
「……まだに決まってんだろ」
「本当……ですか……」
スピカは振り返ると自分より背の高い彼を見上げて人差し指をくいくいと引いた。許しを得たダークロイは紐を解かれたように即座にスピカに抱きつくもその勢いでスピカは床に尻餅を付いて。
「いっ」
「……温かい」
ダークロイはスピカの腕の中で擦り寄る。
「心臓が……動いて……ます」
「だからまだ死なねーつったろ」
大きいくせに。本物とは打って変わって引っ込み思案で臆病な様はまるで小動物みたいで──
「、ッ!?」
爆発音に目を開いて振り向いた先。……食堂。
「……リーダー?」
「俺はもう行くから部屋に戻って休みな」
スピカはダークロイの頭の上に優しく手を置く。
「……はい」
立ち上がり、急ぎ足で食堂へ向かう彼をじいっと見つめながら呟く。
「……いってらっしゃい……」