病めど病まれど



亜空軍所属、偽物集団ダークシャドウ。

対X部隊用人間兵器のコピー集団である彼らは本物の戦士ファイターと比べてその性質というものが比較的歪んでいる上に安定しない。ふとした瞬間が引き金となって暴れたり叫んだりと狂気に晒される場面も多々ある。最もこれは欠陥などではなく製作者にしてみれば"人間らしくない"彼らの言動は好都合であるらしいが。

そんな彼らにも慕う人はいる。

制作に携わったその神々ではなく。


歪みきったこの集団を統括するある種の勇者。

リーダーと呼び慕うその人。


「あっ」

無邪気な声の主が嬉々として駆け付ける。

「リーダーだぁ」

他のダークシャドウが褐色に黒髪と統一されているのに対して何故か白磁の肌に白髪という極めて目立つ彼女はダークゲムヲ。所謂アルビノ種であるらしいが他のダークシャドウと同じく陽光に弱く影を操ることが出来るためまさか除け者にされるなんてことがあるはずもないのだがそれでも彼女なりに思う事はあるのか稀にこうして──

「えへへ」

自身の爪を剥いだり肌を強く掻いたりと赤く血濡れていることがある。聞けば血の赤は乾けば黒になるのだと決まって答える彼女はその自傷行為が異常行動と気付いていない。

「黒くなりました?」

見上げる紅の双眸がぐらぐら揺れている。

「うふふふふ」


肩を竦める彼女の手首や腕には無数の切り傷。


「はやく皆と一緒にならなきゃならなくちゃ」
「洗ってこい」

一言。

「菌が入ったらもっと痛いぞ」
「痛くないですよぉ……っきゃん!?」

デコピン。

「叱られるのは俺なんだからな」

スピカは小さく息を吐いて。

「ルイージに見てもらえ」
「えううー、……はぁーい……」
 
 
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