ぼくのいろ
ゲムヲは言葉を続けた。
「どんな理由があったとしても」
色は、変わっていく。
「塗り潰さないであげて」
――自分の髪と、よく似たそれに。
「……そう」
ゲムヲはかくんと首を傾げる。
「ばかみたい」
そう言って、タブーは黙り込んでしまった。
がやがやと騒がしいはずなのに音が遠く聞こえてくる。まるで二人だけ隔離された空間の中にいるような、そんな感覚だけ互いに感じ取っていた。
「……やめた」
次にゲムヲが顔を上げると、同時に帽子を被せられた。
「あげる。いらない」
返事も待たず、タブーは歩き出す。そうして何の変哲もない壁の前に立って片手を翳すと、音もなく空間は縦に裂かれ青紫色の世界がその先に覗かせた。
――亜空間である。
「……、」
別に期待していたわけではないが、試しに振り返るとゲムヲは絵筆を手に取って、滑らかに軽やかに黙々と、淡々と走らせていた。
つまらないひと。タブーは向き直って亜空間へと足を踏み入れる。
「……うん」
暫くして。ゲムヲは手を止めると、画用紙を広げて微笑んだ。
「やっぱり似合ってる」