ぼくのいろ
日本人形のようなベタ塗りの黒髪が揺れて、終始じとっとしたようなぼうっとしたような、どちらかといえば後者に近い眠たそうな眼が顔を出す。白磁の肌、桜色の唇は未だ口を噤んで、けれどその手はきちんと止めて見つめ返すのは。
「……ねえ」
無知が故、中途半端な正義に駆られた可哀想な人。
Mr.ゲーム&ウォッチ。
「きこえてる?」
彼が亜空軍に所属していた頃にそれとなく顔を合わせていた程度。会話についてはタブー以上に積極性に欠ける彼とでは成立するはずもなく。
「……、」
沈黙が流れる。ただ見つめているだけでは彼の心情など分かるはずもない。
返事を待ちきれず。結局、ゲムヲの腕の下敷きになっていたまだまだ未完成らしき一枚の画用紙を有無を言わせず奪い取ってしまった。
「あっ」
思わず声を洩らす。
「……ぼく?」
絵のモデルの正体はすぐに分かった。あの群れの中で、帽子を被っていたのは自分だけだったから。
ゲムヲが手を伸ばすのを視界の端で捉えて、タブーはあっさりと差し出した。受け取ってすぐ軽やかに鉛筆を走らせるのを眺めながら、
「なにいろにするの?」
……その手が再び止まるのにそう時間はかからなかった。