ぼくのいろ
天空大都市、レイアーゼ。
「ありがとうございました」
洒落たブティックから出てきたのは、なんとタブーだった。
如何にも今時を気取った服に中折れ帽子まで被って決まっている。かといって新しい彼女でも出来たのかというとそうではなく、もちろん理由もあるのだ。
少し歩いて、ショーウインドーを目に立ち止まる。そろそろと近付いては硝子に手を置き終始無言となって見つめる彼も、服の着こなし具合云々というよりはもっと別のものを気にしている様子でそれは言わずもがな自身の髪にあるようで。
一本一本が千切れてしまいそうなくらいきめ細かく繊細で、指を通せばさらさらと髪の質はふんわり柔らかく。ふっと風が吹けばシャンプーが香る。
誰かに自慢したことはなかったが、これといった不満も特にはなかった。
「……、」
今日までは。タブーは自身の髪を指で摘まんで、硝子越しに見つめる。
「あれっもしかして」
ショーウインドーの硝子に映り込む、見覚えのある人影に。
「……!」
帽子を押さえるようにして、タブーは振り返った。