ぼくのいろ
第三研究室。タブーはそこに戻っていた。
「あれっ」
扉が開いたと同時に振り返って、気付いたクレイジーは接近しながら凝視。
「……染めてないじゃん」
昼の発言に期待していたらしい。一方実験の結果を資料用紙に書き留めたマスターは掛けていた眼鏡を外すとようやく振り返って、
「どんな不良少年になって帰ってくるのかと思えば」
タブーはふいと目を逸らす。
「……だって」
後ろに回した手は、互いの指を絡ませながら。
「ふたりのこどもだってあかしだから」
たいせつにしたいんだ。
「な、なんだよそれ……」
これからも。
「また面白いことを教え込まれたな」
ずっと。
「それはいいけど、なんで髪を染めようとか思ったんだよ」
何気ない質問にタブーはようやく向き直って、口を開く。
「くちうるさいおばさんって、かみのいろをむらさきにそめるんだって」
そういうことか。
「兄さん。殴っていい?」
青筋を浮かべるクレイジーの肩にぽんと右手を置いて。
「……タブー」
マスターは呆れたように溜め息。
「影響されすぎだ」
end.
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