いいから空気を読みなさい!
「申し訳、ありませんでしたっ……!」
己の立ち場を弁えない、無礼な行いが彼を不快にさせてしまった。最も尊敬と信頼を置いている彼に対してそれだけはあってはならないことだったというのに。
これ以上の言葉も見つからない。それが精一杯の謝罪だった。
「……別に」
返ってきた言葉にはっと目を開く。
「お前がそこまで気にしてたとは思わなかった。……てか」
スピカはふいと目を逸らす。
「俺も、若干ムキになりすぎたし」
そして沈黙。ダークウルフはそろそろと上体を起こして見つめる。
「許して、くださるのですか?」
「お前が大袈裟すぎんだよ。初めからそうやって素直に」
「……よかった」
まさかここで泣き出しはしなかったが。ダークウルフは本当の意味で安心感を得たのか、本物と同じ厳つい顔つきからは想像もつかない優しげな微笑を浮かべて。
「単純なヤツ」
――それからスピカはダークウルフの話を聞いた。
空気とは何たるか。その疑問を解消する為に、彼が多大な苦労を重ねていたということ。それこそ最後に合流するまで一言一句誤りなく。
「お前なぁ……」
答えが見つからなかったという結論に、含めてスピカは大きな溜め息。