いいから空気を読みなさい!
「失せろ」
次の瞬間だった。
漆黒の雷がカービィの頭上に落とされたのだ。間一髪、後ろに飛び退いて躱したが床には黒く焦げた跡が痛々しく。直撃を許していたらどうなっていたことか。
「うわぁ、おっかないことするねえ」
カービィは床に右手と左膝を置いて、その人物を見遣る。
「……リーダー」
そこにいたのはスピカだった。
ダークウルフが呆然とその名を口にする中、スピカはカービィを睨みつけて。
「うちの連中に変なこと吹き込むなって散々忠告したはずだが」
「恩を仇で返しちゃう系男子? そういうとこ、ほんと父親にそっくり」
言いかけて、雷撃が飛んできたところをカービィは更に飛び退く。
「――すっこんでろ」
頬に電気を走らせ釘を刺すと、カービィはやれやれといった具合に小さく息を吐き出して立ち上がった。背中を向けて、早々に立ち去りながら口を開く。
「こっちこそ痴話喧嘩に巻き込まれるのは御免だし。後はお好きにどーぞ」
相変わらずの憎まれ口だが、今回は目を瞑ることにする。
……それよりも、だ。
「ウルフ」
その名を呼ぶと本人はびくっと肩を跳ねさせた。それで暫く目を見張っていると、意を決したように拳を握り、しっかり腰を曲げて九十度。頭を下げる。