いいから空気を読みなさい!
睡眠用カプセルの中をひょいと覗き込んで。
「いねぇし……」
目的の人物がいないことを確認し、スピカはぽつり。
――ここはダークシャドウの基地である。そしてスピカは今回、とある人物を探している模様。自室から顔を顰めて出てきたところをダークフォックスが捉えた。
「なぁに探してんの?」
ポケットに手を突っ込んだ姿勢。怠そうにスピカは視線を向ける。
「あいつに決まってんだろ」
「忠犬ハチ公ですね」
同行者のダークファルコはにっこり。
「あいつ、外の世界に行ったんじゃね?」
「……はあ?」
互いに顔を見合わせて話す辺り、どうやら彼ら二人はダークウルフが自機を飛ばして外の世界へ向かうところを目撃したらしい。スピカはますます顔を顰めて、
「なんでだよ」
ダークファルコは腕を組んだ。
「……そういえば、リンクから聞きました。何でも三本の矢、とやらの説明をするのに実物を用いたところ、物の見事に全て一人で折られてしまったとか」
おいまさか。
「酷く叱りつけて突き放したそうですね」
「ああそれ俺も聞こえた。“空気読め!”とか“お前なんかもう知るか!”とか」
「ち、ちょっと待てあれはっ」
「貴方の発言なら全て鵜呑みにする男ですよ」
言葉を詰まらせるスピカ。
「それなのに、少し時間が経ったら何事も無かったかのように探して」
「本当に空気が読めないのはリーダーだったりして」
今度ばかりは何も言い返せない。
……くそ。あの馬鹿。