いいから空気を読みなさい!
ムキになったスピカが五本、十本と矢の追加を要求する光景が容易に目に浮かぶ。
リーダーとしての素質は此方側と違って十分に兼ね備えているがあれでいて負けず嫌いな彼だ。後に引けず怒鳴り散らし突き放した結果がこれなのだろう。
この件に関しては時間を置いて謝れば解決はするだろうが。
「っ……」
それじゃ僕がつまらない。
「ね、ダークウルフ」
せっかくのお楽しみを邪魔してくれた件然り。
「その悪癖、僕がなおしてあげよっか?」
今度はこっちで楽しませてもらうから覚悟しててよね――
「ルールは簡単!」
廊下に出てきたカービィは人差し指を立てる。
「屋敷中に転がっている空気を読むだけ!」
「そ、そもそも自分はその、空気とやらがどんなものなのか理解に乏しいのだが」
「ノーヒント! 百聞は一見に如かずって言うでしょ。まずは歩く!」
面白いことには労力を惜しまない男、カービィ。
ちなみにメタナイトは離脱した。……此方については諸事情によりとでも説明しておこうか。決して突っ込んではいけない。彼も慎重な男なのだ。
「……信用性に欠ける」
疑念が渦を巻く。
それでも。もう一度、貴方の傍にあることが許されるというのなら。
「はいはい前向いて歩こうねー」
ダークウルフはカービィに背中を押されながら、密かに決意を新たに変えた。