いいから空気を読みなさい!



微かに頬を染めて。見上げ、瞼を閉じ、唇を委ねている。

どうしろと。

いや、答えは決定されているのだ。それにしてもこれほどまでに分かりやすい空気の説明があっただろうか。……物事というのは一度覚えれば二度目の教養は無いに等しいのだからこればかりは(ある種)残念であるとしか言いようがない。

「っ……」

しかしこれはまたと無いチャンスである。

今度ばかりはスピカも、説明の為だと自分に言い聞かせて目を閉じているのだ。

まさか分からないなんてことはないだろう。前述の通り、これほどまで分かりやすすぎる空気の説明はなかったのだから。ならば、空気を読まなくては。


応えなくては。


接近して両肩の上に手を置くと、スピカの体はぴくんと跳ねた。その愛らしい反応に心臓の鼓動は高らかに、ごくりと生唾を呑んで。

ゆっくりと。

距離を。


数センチから数ミリまで。そして――


「敵さんのお屋敷でなぁにしてるのかなぁー?」


ギクッ。

「みーちゃったみーちゃった」

二人が慌てて顔を向けるとそこにはカービィがいた。戻ってきたのだ。

このタイミングで。

「う、うるさいあっちいけ!」

カービィは相変わらずにやにやと。というよりこの空気は。

「どうしよっかなぁー」
「てめえあんま調子乗ると今度こそ黒焦げに」
「リーダー」


――この空気は。


「な、」

言葉を失うスピカと、その様子を眺めてカービィ。

「……空気が読めないんだから」



end.
 
 
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