いいから空気を読みなさい!




ここは亜空間にある、ダークシャドウの基地。

「三本の矢?」

スピカは怪訝そうに振り返った。

「はい。先日お借りしたある本の文中に、ものの例えとして三本の矢というものが挙げられていまして。恥ずかしながらそちらの内容を全く知らないのです」

そう返したのはダークウルフである。

彼らも依頼を受けていない休日くらいは比較的おとなしく、言ってみれば一般人と変わらない極々普通なもので、彼の場合は読書をしていたらしい。

「そうだな……」

スピカは立ち止まった。二人は昼食を終えて廊下を歩いていたのである。

「よおリーダー」
「リンクか。悪いが矢を出せ」
「……はあ?」

出会い頭にこのようなことを言われたのでは誰だって同じ反応を返すだろう。

「新手のかつあげかよ」

普段の服装や装備、任務上がりの関係上矢筒は背負っている。すぐにでも休みたいところを捕まってしまったダークリンクは上から手を回して適当な数の矢を掴み、差し出した。それを受け取ったスピカはまず、一本を手にそれ以外を預ける。

「百聞は一見に如かず、だ。いいか?」

スピカは両端を持って上向きの弓張りに。ぐぐ、と引いて。

「一本くらいならこうやって……」
「っ危ないですリーダー!」

案の定、慌てふためくダークウルフ。


――そしてまさか、この後スピカにこっぴどく叱られて落ち込む羽目になろうとは彼自身まさか夢にも思わなかったことだろう。
 
 
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