神様のなにもない一日
……ふむ。
どんな衣服をどさくさ紛れに着せられてからかわれるものか身構えていたのだが。
これから食事ということで少し汚したところで差し支えないのであろう白いカッターシャツに黒のハーフパンツ。足元はハイソックスにローファーと何処かの御令息のよう。
「此方です」
導かれるがまま辿り着いたその部屋は普段自分たちが食事を摂っている場所と異なる。しかし警戒したところでドアノブに触れてさえいない空き部屋だってあるのが現状だ。
マスターとクレイジーがちらりと視線を交わす中で知ってか知らずかダークファルコは小さく笑みをこぼして扉を開く。
「さ。どうぞ──」
天井には豪華なシャンデリア。かといって迎えた広間の明かりは派手すぎず晩餐会に相応しく薄暗い落ち着いた雰囲気を保っている。
凡そ予測通りの白いテーブルクロスの敷かれた異様に長いテーブルの上には一般的な食卓の風景には到底似合わないであろうアンティークな作りの燭台が怪しげな空間を演出していて。
「うっわ」
クレイジーが思わずそんな声を洩らした。
「お気に召しませんでしたか?」
「そうじゃないけど」
先んじて引かれた椅子に腰掛ける。
「蛙の目玉の煮付けとか出てきそう」
「偏見というものだぞ。それは」
燕尾服かと思いきやいつもの衣装を纏って予め待機していたダークマルスは笑み。
「候補には上がっていたんだけどねぇ……」
「偏見持ってるのはどっちだよ」
弟の的を射たツッコミにマスターは溜め息。