神様のなにもない一日
……ゆっくりと。現実に戻ってくる。
重い瞼を開いた先で見つめていたそれが自室の天井だと気付くのに暫く時間が掛かった。
「……、──ッッ!」
はっと目を開いて起き上がる。まさか自分でも着替える間も無く深い眠りに落ちてしまうとは思いもよらなかったのだ。
見ていた夢の内容なんてものは忘れた。動悸を治めて傍らで眠る弟に目を遣る。続けざま窓の外へ目を遣ったが昼夜の存在しない此処に申し訳程度で設置されただけのそれが太陽は真上か沈んだかなどと教えてくれるはずもなく。
「クレイジー」
ぽんぽんと肩を叩いて起こす。
「、んぅ」
弟は小さく身動いで。
「マスター様。クレイジー様」
ドアをノックされたのは直後のこと。
「お目覚めですか?」
「ほう。感心した聴覚だな」
「コイツじゃなくて俺の方っスよぉ」
まだいたのか。と言いたいが敢えて触れず。
「入ってもよろしいでしょうか?」
「……許可しよう」
承諾を得て程なく開かれた扉の音で、弟は今度こそ目を覚ましたようだった。
「おはようございます」
ダークファルコはにっこりと笑って。
「早速ですが──お着替えをしましょう」