神様のなにもない一日
「兄貴。そっちの出力調整してくれ」
「ううん……?」
指示の通りスイッチを捻る。
「だああっ兄貴! 上がりすぎだ!」
第五研究室と称されるこの場所が他の研究室と異なる点は何といってもその広さにある。
大きく開かれたホールの端には円柱の筒が幾つも並べられていてその透明な硝子の奥には形容し難い液体が浸されている。
様々な役割を果たすのであろう機械も同じように端に寄せられていて操作の術を理解し得ないのなら尚のこと触れるべきではない。
本来であれば。
「あの。これ本当の本当に合ってます?」
ぱたぱたと駆け寄ってきて小首を傾げるダークゲムヲに訊ねられたタブーはじっとモニターを見上げて口を開く。
「たぶん」
見様見真似では聞こえが悪いが実際今日この時の為だけに時折見てきた操作を思い出しながら機械に触れているのだから間違いではない。
「っし。これでどうよ?」
エンターキーを勢いよく弾いてダークルイージが振り返るとタブーはすんすんと何やら匂いを嗅ぐかのような仕草をして。
「おんなじにおい」
おお、と感心を覚えたダークマリオがぱちぱちと拍手を送れば踏ん反り返るダークルイージの鼻も伸びるというもの。
「恐れ入ったか。これが天才様の実力よ!」
「てんさいなのはマスターのほう」
一転してばっさり切り捨てられてしまい思わずずっこけてしまいそうになる。
「そりゃマスター様にゃ敵わねえけどさあ!」
「タブー様。服、自分で脱げます?」
目線を合わせて優しく訊ねるダークロボットにこくりと頷き手を掛けるも。
「……マスターとクレイジーは?」
表情には然程出ないがいつも見えていた姿が今日この時に限って見えないとなるとやはり気にかかるのだろう。ダークロボットは目を細めて頭の上にぽんと手を置く。
「ちょっと休んでるだけですよ。……」