神様のなにもない一日



口に運んだ甘味がするりと喉を伝って身も心も癒して満たす。眺める兄に気付いてスプーンで掬い上げたそれを分け与える。好意に甘えて受ければさながら少女がときめくかのように。

きゅん、と胸の奥が疼いて──

「結局ヒト使いの荒ェこったな」

パフェとは一概に言えども指定素材をふんだんに使った調理ということでまたもや駆り出されたダークリンクは舌を打つ気力も無いのかやれやれといった具合に小さく息を吐く。

「そうですね」

調理を手伝ったダークファルコもタオルで手を拭いながら部屋の奥に配置された厨房から出てきたがその表情は極めて穏やかだった。

「たまにはいいじゃないですか」

理想郷を目指す過程で後いくつもの争いや醜い言葉の投げ合いに触れなければならないのか。光に背中を向ける主君はこの世界を塗り替えるべく明日も影の中に立つのだろう。


なにもない、なんて有り得ないけれど。

あってはならないことだけど。


それでもどうか今だけは。


他の何者とも変わらないような。

ありふれた時間を。


……幸せを。



end.
 
 
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