神様のなにもない一日
齢幾つの子供に見られているのか知らないが。
「……まったく」
小さく息をついて湯船に浸かる。泡が蓋の役割を果たしていたのか確かに丁度いい湯加減で全身に蓄積されてきた疲労という疲労が癒されていくような感覚を覚えた。
ふぅ、と今度は長めの息を吐き出し目を細めていると不意に肩をつつかれて。
「わぶっ」
情けない声を上げる。
「あはははっ」
それというのもクレイジーが手のひらで掬った泡を吹きつけてきたからで。普段同じやり口で仕返しするような柄ではないが今回ばかりは遊び心が勝って全く同じ方法で泡を吹きつける。
「わっ……ぷ! もう、兄さん……!」
ひと通り泡風呂というものを堪能したところでふたり揃えて息を吐き出した。逆上せてしまわない内に早く上がってしまわないと脱衣所で待機しているであろう奴らが何をしているものか分かったものじゃない──
「もし」
ふとクレイジーが口を開いた。
「僕たちが何の能力も持たない子供だったら」
藪から棒に。けれど視線を向けてみれば何処か遠い目をしている様子で。
「……兄さんは」
続けざま。
「どう思う?」
クレイジーは問いかける。
「今より幸せだったと思う?」