保健室は多忙
俺は保健室を担当している先生、マリオ。
姫様を助けに行くとか、配管工が本業じゃないのかとか、今はどうでもいい。
保健室にいる限り、俺は先生として今日もやって来るであろう患者の相手をしなければいけないのだから。
「邪魔するぜ」
数回のノックの後で入ってきたのは、やはりというか何というか、所々に切り傷を作った体操服姿のソニックだった。
確か、すま組は体育の授業だったっけな。あのクラスは毎回怪我人が出るし、元気があるのはいいことなんだが……
「転けるのが好きだな、お前」
「違うって、聞いてくれ。鬼ごっこは遊びなのにさ、鬼役のマルスが本気で……」
溜め息混じりに語りながら、ソニックは丸椅子に腰掛ける。俺は適当に相槌を打ちながら、てきぱきと治療を始めた。
それにしても、鬼役の気持ちは分からなくもない。ソニックは誰よりも速いのだから、本気で追わないと追い付けない。
マルスは勇者だな。だが、怪我人を送り込むとは許すまじ。ま、それが仕事だけど。
「……でも、怪我したってことは追い付かれたのか」
「鬼ごっこってのはタッチされなきゃいいんだろ? だから追い返そうと思って、一旦立ち止まってから蹴り飛ばしたんだ」
ねえよ。
「無茶苦茶だな。それで?」
「そしたらマルスの奴、何処からか剣を取り出して……そこから乱闘に発展さ!」
想像したら、マルスが剣を振り回し、ケタケタと笑いながら逃げ惑うソニックに襲いかかっていた。
どっかの切り裂き魔じゃあるまいし。
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