夏バテですか?
次の日。
「やっぱりね」
ぎくりと肩を跳ねる影に、マルスは小さく息をついて腕を組みながら見つめる。
「朝が早いことで」
早朝。けれど稽古の行われる中庭ではなく裏庭に回っていたのは冷や汗をたらりと流す目的の人物であるカービィと鉢合わせる為である。
「け……稽古にはまだ早いんじゃないの」
全く便利な能力をお持ちなことでメタナイトをコピーしたのだろうその姿とその剣では誤魔化しようがなく明らかに動揺している。
「はっそれとも年寄り特有の早寝早起き体質になっちゃったとか?」
お得意の軽口で気を悪くさせて話を逸らせようというつもりなのだから残念ながら見え透いた罠にかかるほど抜けてはいない。
「……!」
小さく息を吐いて歩みを進めればそれに倣って彼自身も後ずさった。その内に彼の背中は壁に当たってしまい思わず振り向いては自分が追い詰められたという現状を再確認する。
「な、なに」
まるで此方が悪者みたいに警戒を怠らずけれど動揺も隠し切れずに見上げるその様は仔犬そのもので幾度目かの溜め息が洩れそうになるが。
「ッ!」
彼の頭のすぐ横の。
壁に勢いよく手をついて。