大人になりたい!
「ちょっとー。フォックスってば昔の女引きずるタイプなのー?」
カービィはにやーと表情を笑みに変化させて。
「あっ。男、だったかな?」
「かっからかうな!」
焦るフォックスにマリオは頬杖をついて、横目。
「……何か落ち込むようなこと、あったか?」
確かに。これには全員が思い当たらずに一緒になって唸った。
「原因が分からない以上、迂闊に手は出せないですよフォックス」
「なんでそこで俺に話をふるんだ」
「前例がありますからね」
徹底してからかわれるフォックスに笑う声が上がる。当の本人は「いい加減にしろ!」と言いながらも微かに頬を染めて。苦い思い出を連想させる言葉の数々はとても、いや果てしなく苦い。……その一方で離れた席に腰を下ろして。
嫌でも聞こえてくる会話にその大きな耳を傾けていたウルフは。コーヒーに映り込んだ自分を暫く睨みつけた後、軽く飲み干して。静かに、その席を後にした。
「……う、」
さすがにこれだけは誤魔化せない、か。
頑張って背伸びをしてみたが、この身長では届かない。ああして徹底的に印象付けたからには後戻りするなんてもったいないし。
ここで誰かに頼ったら。いつもの僕がたまたま気取ってただけなんだって。
……それだけは。