大人になりたい!



一瞬、何が起こったのか分からなかった。

――ばちばちと電気の擦れる音が大きく響いて、かと思うと肉の裂く音が甲高い鳴き声によって掻き消された。刹那、全ての音がぴたりと止んだのだ。

はたして魔物にそれらしい感情はあっただろうか。音を耳にして振り返り、そして、固まった。当然だろう。慕っていた親玉の首が間もなく。


ずどん、と音を立てて。地に転がったのだから。


声もなかった。先程よりは小さく、ぱちぱちと音を鳴らして擦れる電気の塊を、ルーティが手にしている。本物よりは幾らか脆いだろう、だけどそれらしくその形を象った……言ってみれば電気で作り出した剣を、彼は手にしていたのだ。

自分たちが見知った剣を象ったそれは、青白い光を帯びて所々に今も電気を走らせている。それが、今しがたまた音を立てて横たわった親玉の、あの大きな頭をたったの一太刀で斬り落としてしまったのだ。

程なくして子分の魔物の一匹が唸り声を上げ、勢いよく駆け出して。ゆっくりと振り向いたルーティは迷いなく、電気を帯びたそれを。

ぶん、と振るった。……


「それで、他の魔物はどうなったの?」

――エックス邸。マリオは食堂でルイージと話していた。

「ま、リーダーを失ったからには雑魚も同然。森の中に逃げる前に片付けてやった。外の空気を吸ったからにはまたいつ出てくるか分からないんだと」

リンクは腕を組んで。

「今回の作戦は失敗かと思いましたが……終えてみればそうでもありませんでしたね。ああして誘い出したお陰で結果的にはかなりの数を減らせました」

うんうんと頷いてカービィ、おやつのクッキーを摘まむ。

「凄いよね。そこまで考えていたなんてさ」
「本当にそう思うか?」

そう口を開いたのは何処か浮かない顔をしたフォックスである。
 
 
7/11ページ
スキ