大人になりたい!



今回の任務というのはさほど難しいものではない。

屋敷からそう離れていない位置にある森。そこで暴れている白毛の二メートル強ほどもある狼に似た魔物を討伐するのが今回の目的だ。一人でももちろん十分なのだが、子分を何匹か引き連れていて非常に危険な為、五人編成が適正と判断された。

選ばれたのはルーティ率いるマリオ、リンク、カービィ、フォックスの五人。


「……じゃ、始めて」

森の中、ではなく手前で合図を出すと、予めウルフの能力をコピーしてきたカービィは両手を縦に構えて口の両端に側面を添えて、すうっと息を吸った。

長く、尾を引いて吠える――狼を真似た遠吠えである。

「追うのではなく誘い出す作戦とは。此方にとっては有利ですね」

リンクは感心していた。ここは見晴らしの良い野原なのである。

「……どうしました?」
「どっかで同じようなパターンを見た気がするんだよな……」

うーん、とマリオは腕を組んで。

「なあフォックス」
「それを俺にふるということは確信犯か?」

怒っているわけではない。単純に苦い思い出である。

その時、草木が怪しくざわざわと音を立てた。不穏な空気がどっと押し寄せて、全員が一斉に構える。次の瞬間、ターゲットは飛び出してきた。

「っ……!」

近距離による遠吠えに、全身をびりびりとした感覚が襲う。

二メートル強とは説明を受けていたが、思い込んでいたよりもでかかった。こいつを五人で討伐しろ、なんて言われたがたったの五人でかよ、と今更ながら突っ込みたくなる。当初は一人でも十分だと言われていたのが非常に阿呆らしい。

遠吠えが切れて、数秒間の睨み合い。

「――来る」

ルーティは目の色を変えた。
 
 
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