大人になりたい!



第一印象は大事だよね。

ルーティは椅子を引いて腰を下ろすと、はあと小さく息を吐いた。何気なく視線を上げてみて、内心ぎょっとする。顔に出なかったのは幸いだ。

そこにいたのはある意味での刺客、リオンだった。

「……何故」

向かい側、テーブルの下から手を置いてひょっこり顔を覗かせた様を頬杖を付きつつ見つめていると、リオンはわなわなと震わせていた手をぐっと握った。

「ストッキングではないのだぁあッ!?」

ばん、と平手でテーブルを叩いて立ち上がる様をじとっと呆れ目。

「ハーフパンツの中から覗かせる脚、それを際立たせるべく包み込む黒のストッキング! 容赦なく醸し出される色気に私は日々ムラムラしてきたというのに!」

リオンは勢いよく指差して。

「それを……あろうことかジーンズだと! 私個人に対する侮辱罪だ!」
「変態だね」
「寧ろ私がそうでなかった日があったのかと小一時間問いたい!」

そこまで言って、リオンは改めてルーティの視線に気付く。

――ひんやりとした冷気のような眼差し。黒に堕ちた双眸が口では語らずとも、クズだと罵り見下してくる。ああ、この湧き上がってくる熱い感情は。

「っ……!」

不意に口角が吊り上がるとリオンの心臓は大きく鼓動を鳴らした。

「……それで」

ルーティは立ち上がる。ぽーっと見つめるリオンの元へ。

「僕を使って。何処まで妄想した?」

じっ、

冗談抜きで誰だお前はぁああッ!
 
 
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