大人になりたい!



「別に怒ってんじゃねえ」

ウルフは小さく息を吐き出して。

「無理すんなって言ってんだ」

はっと顔を上げた。

まさか、ウルフにこんなことを言われるとは思ってなかったのだ。対するウルフは恥ずかしげに頬を染めることも、顔を背けることもなく。

ただじっと見下ろしているだけで――

「……僕」

ルーティはそれから少しの間を置いて、口を開いた。

「年齢の割に子供っぽいでしょ。スピカとはひとつしか歳も違わないのに」


――年相応になるにはどうすればいいのかな。このままじゃ駄目なんだ。もっと大人になって、例えるならスピカみたいなかっこいいリーダーになりたいんだよ!


「……面倒くせえ奴だな」

なっ、とルーティは小さく声を洩らしたが。

「関係ないだろ」

そう言われて口を閉じた。

「お前はお前だ。誰も指摘していない」

ウルフはその手をゆっくりと伸ばす。そうして頭を撫でる手が。

「それでいいってことだよ」

この耳に届く声が。

「っ……」

じん、と胸に染み渡る。温かくて、優しかった。
 
 
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