大人になりたい!




ぱたり、と鉢合わせ。

「……よお」

乱雑に外側に向かって跳ねた金髪。小柄。吊り目。黒い瞳。

まさかこいつと、それもエックス邸の中で鉢合わせすることになるとは。そいつは目が合ってしまうとぴたりと足を止めて挨拶程度に口を開いたが、返す義理もないのでじっと視線を返し、黙っておくことにする。

「行くぞ」

ダークシャドウリーダー、スピカ・リー。

奴が言うと、影の中から自分とよく似た容姿の男が現れた。いや、まさかずるりと体を引きずるようにして出てきたとか(気持ち悪い)、頭の天辺から足にかけて生えてきたとかそういうのを想像してもらっちゃ困る(土管じゃねえんだから)。

正しくは足から頭の天辺にかけてスピカの影が人の形を象り、それが粒子となって弾けると本物が姿を現した、とこういうことだいちいち面倒くせえ。

「……、」

容姿はともかく。言うことをすんなりと聞く、その忠誠心とやらは自分とまるでちげえ。ひと睨みいただいて、立ち去るそいつを流し目。

なんでそいつらが自分の部屋から出てきたのかは気にもならなかった。


「……何してんだ」
「うわっ!」

大袈裟に声を上げて、びくっと肩を跳ねさせる。

ドアノブを捻る音が聞こえなかったし、多分、ドアが半開きだったんだ。スピカの奴。苦笑を浮かべて振り返る僕を、ウルフは早速呆れたように見つめている。

「……電気消すぞ」

そう言って、答えも聞かずに消灯するのはいつものこと。

明日は任務が控えている。……けど、肝心なのはそこじゃない。大丈夫、その為にスピカをここに呼んだんだから。このままじゃ、駄目なんだって。


僕が一番、そう思ってるから――
 
 
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