ひだまり



通りすがり際。

ダークピットはタブーの頭の上にぽんと手を置いて、ダークロイはぺこりと一礼。去っていく二人を尻目に見送って、タブーはやっと歩き出す。

……触れられた箇所を少し撫でながら。


靴音が響く。それだけだ。

どの扉の先に誰が居るのかは検討もつかない。当たりもハズレもないけれど。二階に辿り着いてタブーはずらっと連なる扉を通路を歩きつつ交互に眺めて、ようやくひとつの扉の前に立ち止まった。ドアノブに手を掛けて、引く。……開いた。

不用心も何もこの亜空間には同胞しかいない。仲間討ちの可能性が無いとも言いきれないがそれを許さないのも彼ら。分かっているから互いに手を出さない。

楕円形の睡眠用カプセルが二つ。あれが彼らのベッドのようなもの。

ダークシャドウである彼らはあの中で眠らなければ使った力の回復を図れないし人の形が崩れてしまう恐れもある。まあ、毎日そうしなければいけないわけではないけれどそれだけ、強い力には代償が付きまとう……今も定期的に薬の浸された円筒の中でメンテナンスを受けなければならない、自分のように。

タブーは近付いてひょいとカプセルの中を覗き込んだ。黒い髪が窺える。

もぞもぞと動いて寝返りをうった。聞こえはしないが静かな寝息を立てて熟睡しているようだ。じっと眺めているとカプセルが微かに振動を起こした。

「……ん」
 
 
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