ひだまり
不便か快適か。言わずもがな後者である。
部屋を出て通路を歩き、階段を下りて玄関を抜ける。そこからまた、幾らか離れた彼らの基地へ徒歩で数十分――などといった労力は必要ない。
移動したいだけなら。
左目が赤く瞬き目の前の空間を縦に裂き、右目が青く瞬き無の空間の先に目的地を繋ぐ。その先を通り抜けてしまえば。
対X部隊用人間兵器。亜空軍所属偽物軍団『ダークシャドウ』。
タブーが抜けた先は彼らの基地の一階通路だった。寝床は二階にある。
「あれぇ」
一歩踏み出すより先にもう、気付かれた。
「タブー様じゃない。早起きだねぇ」
「あの……おはようございます……」
ダークピットとダークロイ。暗がりの中、まだ目が慣れていないお陰でぼんやりとだったが口調と姿形で悟った。けれど彼らも本来の起床時間とは異なる。
鉄みたいな匂いがする。
「たのしかった?」
タブーは聞いた。
「まあまあだったなぁ。ちょこまか逃げて騒いで」
「……少し、手こずりました」
ふぅん、と声を洩らして両手を後ろに回す。
「じゃあ俺たちシャワー浴びてくるんで」
「し、失礼します……」