悪の美徳



「な、なんでしょうか」

喋り方が。明らかに緊張してるなこいつ。

「……お前、スピカのことは好きなのか?」
「ぶっ」
「ちょっと待て」

どさくさ紛れになんつーこと聞いてんだこの親父は!

「なんだ照れてるのか?」
「照れてない」
「同じ部屋で寝てるんだろ?」
「そういうパートナーじゃない」

一方でダークウルフは頬を赤く染めてわなわなと震えている。そんなダークウルフを見つめてクレシスはにやり。カップを小皿の上に置いて口を開いた。

「寧ろ愛している、とか?」

このクソ親父ィィィ!

「お、俺は……!」
「答えるなよウルフ! 父さんも!」
「そうかっかするなって」

クレシスはくすくすと笑いながら再びカップを手にする。

「……でも。分からないだろ?」

口元には怪しく、笑み。


「紛い物なんてのは」
 
 
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