悪の美徳



「なんだ勢揃いじゃねえか。会議でもやってたのか?」

貴方対策のですけどね。

「おー。俺の胸に風穴開けてくれた誰かさんもいるなぁ」

ぎくりと肩を跳ねさせたのはダークリンク。

そういえば、こいつだけはDX部隊の一員として活躍していた頃の父さんと何度か戦ったことがあるんだよな。それにしても風穴って何の話だ?

「……父さんも相変わらず」

スピカはふう、と短く息を吐き出す。


さて。ここでさりげなく彼の父親について紹介しておこう。ご存知ない読者様の方が圧倒的に多いだろうが、男の名前はクレシス。元DX部隊の一員である。

跳ねっ毛の目立つその髪が種族がピカチュウであるにも関わらず真っ黒なのはもちろん、市販の髪染めを使って染めたから。彼にとって金髪とはどうにも落ち着かないものらしい。代わりに、金のメッシュが二本ほど入っているが。

スピカのあの特徴的な性格も彼から継いだものなのだが、残念ながらあの身長の低さだけは母親から受け継いでしまった。ピチカについても察してほしい。


「言っとくけど特に何もないからな」

黒いテーブルクロスの敷かれた丸テーブルの前、向かい合うように座ってコーヒーを口にする父クレシスをスピカは頬杖を付きながら見つめる。

「悪役っつっても部隊は上手くやってるし」
「相手は戦闘兵器の偽物集団だろ。陰湿なイジメとかないのか」
「ねえよ。リーダーなんだから使役くらいはやれてる」

だから帰ってくれ、とばかりに視線。

「……そうか」

クレシスはとある男にすっと目を向ける。

「お前のパートナーはあの狼か?」
「そういう制度はねえよ。ま、組む回数も多いし同室だけど――」
「おいそこの狼男。こっち来い」
「話聞けよ」

ダークウルフは少しだけ目を丸くしたが、素直に駆けつけて。
 
 
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