悪の美徳
――ダークシャドウ基地、食堂。
「穏やかじゃないですねぇ」
ダークファルコは先頭で此方の集団に背中を向けているスピカを見つめた。
「で、どうかしたのですか?」
スピカはちらりと一瞥。小さく息を吐き出し、やがて振り返った。
「……俺の」
ふいと目を逸らして。
「父さんが、来る」
沈黙。
「ええーっ!?」
当然の反応だった。
「やややっやべえ! こういうのってあれだ、飯! ご馳走作らねえと!」
「お赤飯! ああいや待て違う、七草粥!」
「ばかっ、こういう時はケーキよ! バースデーケーキ!」
といった食べ物関連のことから、
「さささすがにパンツ穿かなきゃまずいよね! ねぇ!」
「き、昨日買った脳みそのホルマリン漬け何処に隠そう……」
「新しい服に着替えなきゃ返り血で真っ赤っか……」
自分の身の回り関連のことまで、とにかく大パニック。
「……てめえら」
スピカははあ、と溜め息。
「いいから落ち着けえっ!」
鶴の一声。そしてまた訪れる沈黙。
「……ゲムヲ」
「はいな!」
「お前はとりあえず下着を穿け」
「ほいさぁ!」