悪の美徳




俺の父さんは元DX部隊のメンバーで、今はメヌエルにある陸上部隊訓練所の教官を務めている。鬼畜過ぎると専らの評判で息子としては複雑だったわけだが。

「よお、スピカ。実は今日、休みが取れてな……」

父さんも同じ心境だったようで。

「まだ基地にいるよな。そっちに行くから待ってろ」
「……は?」

ピッ、と電話を切ってその男は紫色の空を見上げる。

「陰気くせぇな。亜空間ってヤツは」


突然の訪問。


「リーダー?」

顔色が宜しくない。

電話に出る前と切った後では明らかに表情が違うスピカにダークウルフは首を傾げる。それまでベッドの縁に腰掛けていたスピカ、携帯を枕元に置いてふらり立ち上がって。即座に無線機を鷲掴み、スイッチをオンにして叫んだ。


「てめえら今すぐ食堂に集合しろ!」


――え?

「任務遂行中の奴はさっさと片付けて離脱!」
「り、リーダー? 何があったんです?」

ダークウルフはますます困惑。

「……来るんだよ」

スピカは酷く青ざめた顔で呟いた。

「鬼が……!」
 
 
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