素直じゃないけど



ゲムヲだった。こっそり見せつけるスケッチブックには文字が何か書いてある。

……カービィは彼らに背を向けているため気付いてないらしい。


そして内容は。


「っふ」

マルスは小さく吹き出した。

「『ありがとうってどうやって言うの』?」

込み上げる笑いによって吊り上がる口元を隠すように片手で覆い隠す。だけど堪えきれずにくすくすと、肩を震わせながら嘲るように。

「君、そんな簡単なことも言えないのかい?」


その瞬間。

ああ。これは相手が悪かったな、と思った。


主にお前が。

「ッ!?」

ずだん、とマルスのすぐ横の壁を抉れるほど強く蹴り付けて。

「……笑止」

ぎろりと睨み上げる。

「勘違いしないでよ僕があんたにそんなこと聞くとでも?」

マルスはきっと目付きを変えた。

「逆だよ逆。分からないであろう王子様に教えてあげようかと思っただけ」
「その割には妙に吃っていたじゃないか」
「耳おかしいんじゃないの? 大きい病院で全部見てもらったら?」

ぴきぴきとマルスのこめかみに複数の青筋が浮かんで。

「あわわ」

嫌な予感が即的中。

「よくも言ったな、このピンク玉!」
 
 
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