素直じゃないけど
……さて。どう言ったものか。
なんていうことはない。“ありがとう”という感謝の言葉はどう伝えるべきなのか、それを聞くだけの話なのに。普段人を煽りからかう立場だった自分が、逆手に取られるかも分からない発言をまさかこの王子様にしなければならないなんて。
これを屈辱、と思っては駄目なんだろうな、恐らく。
「……?」
マルスは怪訝そうに眉を寄せる。
「あのさ」
ようやく声を絞り出して。
「ぁ、あぁ」
コミュ障か自分は!
「あぁあありがとうってどどどどうやって」
いっそ殺せ。
まさか自分がこんなにも素直とは無縁の男だと思わなかった。その一方でマルスはぽかんとしている。何を言ってるんですか、とでも言いたげな顔。
「……!」
ふとマルスは気付いた。ヨッシーの後ろに蠢く影。ひょこっと顔を出して。