それは甘くてあざとくて



ちょっと待て。

「おまっ、仮にも女の子だろうがぁぁぁ!」
「仮じゃないでしょ! 誰のせいだと思ってんのさ!」

こうして騒ぐしか術がないのは、ルーティが両手を床にしっかりと押さえ付けているからである。ルーティはより体重をかけて捕らえる。

「それで! こんなことした動機は!」

スピカはふいと顔を背けた。

「……今日はバレンタインだろうが」
「えっ」
「ピチカは女の子だぞ! それも年頃の!」

ばっとようやく此方に顔を向けたスピカは何故か涙目で。

「こんだけ男がいるんだ、想いを寄せてる奴がいるかもしんねえじゃねーか!」
「だ、だからって皆の性別を逆にすることないでしょ!」
「人のせいにすんな! 作ったのは俺じゃねえ!」

往生際の悪い……ルーティはむっとして。

「じゃ、依頼したのは?」
「俺です」
「共犯者だよ!」

ごもっともである。スピカはじたばたと暴れながら、

「こんなことになるなんて思わなかったんだよ、てか離せ!」
「っ、じゃあ約束! 解放したらすぐに皆を元の性別に」


むにゅっ。


たらり、冷や汗。急に手を離されるものだからつい当たってしまったのだ。

「……!」

少女ルーティの胸に。

胸に。
 
 
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