それは甘くてあざとくて
しん、と静まり返る。
ウルフは小さく息を吐き出してそれからルーティの頭の上にぽんと手を置いた。
「……前からだろ」
「そんなことないよ!?」
なに言ってんのこの人!
と、そこでルーティはあることに気付いた。気のせいだろうか。ウルフの胸に膨らみがある気が……いや、現にあるのだ。ルーティはそれをじっと見つめて。
ぷに、と指でつついてみた。
「あだぁっ!」
即座に反撃。次の瞬間にはウルフから拳骨を喰らい、ルーティは頭の天辺を両手で必死に抱えながら痛みに瞳を潤わせた。……ああ、夢じゃない。
僕もウルフも女になって――
「ルーティ!」
近くの部屋から勢いよく扉を開いて出てきたのはフォックス。が、普段と違うのは薄茶色の髪を肩まで伸ばし、ズボンではなくスカートを履いているという点で。
そして、何より。
「大丈夫!?……なんてことするの、ウルフ!」
「いきなり触ってきたそいつが悪いんだろ!」
フォックスに抱き締められながら、ルーティは腕の中でぼそぼそと。
「はわっ……む、胸……当たっ……」