それは甘くてあざとくて
「ほら、頑張って」
そこにいたのはダークウルフだった。ところが彼、何やら緊張しているのか体は強張っているし心なしか顔も赤い。付き添いのダークファルコが耳打ちをしてやっと、ダークウルフはそれまで後ろに隠していた物をスピカに差し出した。
「これを!」
……それは彼に似つかず、とても可愛らしく包装されたプレゼントだった。
「な、何だよ」
「チョコです!」
「くれるのか?」
「はい!」
きっかり九十度、腰を曲げてお辞儀をした姿勢のまま。
「……で、何を作ったんだ?」
「チョコです」
「いやそれは分かって」
「カカオから作りました」
おい。
「あのなー……つか、男が男に作って渡してどうすんだよ」
「はい。でも」
ダークウルフはにっこりと笑って応える。
「想い人にチョコをお渡しするのが、この行事の仕来りですから」
沈黙。
が、次の瞬間ぼふっと音を立ててスピカの頭から湯気があがった。顔はみるみる内に真っ赤に染まり上がり、悟られまいと慌てて背中を向ける。だがしかし、そこにはダークルイージやダークフォックスもいるのでぱっと顔を背けて、ひと言。
「さっさと帰るぞ、馬鹿野郎!」
いつもの照れ隠し。しかしダークウルフの傍を横切る瞬間、スピカはぼそっと。
「……ありがとな」
バレンタインも少しは悪くないかもしれない。けど、来年こそは。
――ちなみに。
「ひっ、わ、ウルフ!?」
「……なに隠してんだてめえ」
ルーティはこの一件で暫く胸を隠す癖が抜けなかったとか。
end.
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