それは甘くてあざとくて
「こ、これはっ、違うからな! 断じて!」
ぱっと手を離して決して変態行為ではないと否定するスピカの顔は当然のことながら赤かった。一方でルーティは突然のことにぽかんとしていたが。
「……きっ」
一体何が起こったのか。それをようやく理解すると。
「きゃー!?」
顔を真っ赤にしながらこの反応、紛れもない女の子である。
「っ、ああもう!」
何が悲しくて女体化した幼馴染みとよくある漫画みたいな展開を繰り広げなきゃいけないんだよ! スピカはルーティが怯んでいる隙にその下から抜け出すと、立ち上がり、ソニック顔負けの超音速猛ダッシュ。目指すは、中庭。
「我ながら名案じゃねえ?」
ダークルイージはにやりと笑って。
「奴らの性別を反転させりゃ、リーダーの妹のチョコは誰のものにもならないし、女体化した野郎共のチョコは必然的に男集団である俺たちの元に行き着く……」
「その発想が非リア充」
「うるせえ!」
ここはエックス邸の中庭。
何やらよく分からない造りのヘンテコな機械の傍でふんと鼻を鳴らす製作者ダークルイージの隣で、欠伸を洩らすのは付き添いのダークマリオ。
「リーダーまで女になっちまわねーか心配だなぁ」
「ご心配なく。この光線は一晩浴びてようやく効果が表れるもんだからな」
何処か不安げなダークフォックスに、ダークルイージは得意げに返す。
「……あ」
「これを二時間で造り上げるとか真面目に天才すぎじゃねえ? リーダーだってお喜びのはず……ま、なんで飛び出したのかは知らねーがご褒美の一つや二つ」
次の瞬間だった。
「せぇいやああぁあ!」
駆けてきたスピカの飛び蹴りが機械にヒット。
着地後も続けて蹴りを数発入れ、ぷすぷすと音を立てて機械が電気を走らせ、黒煙を漏らし始めたところで指を鳴らし、稲妻放出。見事直撃、一瞬だけ音が止んで。
「……削除」
その呟きを合図に――大爆発。