ふしぎなとびら、ひらかれて



「ち……ちょっと待って」

空気が色付く。

「なんで、俺なんだよっ」
「個人的見解だ。こういうのは君の方がやりやすい」

掲げられた両手をひとつに括り扉に押さえ付けて。

――首筋に唇を触れる。

「ば、っ」

視線を感じる。見られてる。

「……ねえ」

すっかり熱を帯びた体に追い討ちをかけるかのように、その人は、囁く。


「……ずっと好きだったんだ。……嘘じゃない。君を心から愛してる。もう二度と離さない。……逃がしてあげないから、覚悟していてね」


ロックの外れる音。

『喜んで。幸せになりましょう!』

認証ボイスが流れるとそれまでロイを捕らえていたマルスはあっさり解放した。

たまらないのはロイの方である。

「――っあのなぁ、人を扱き使うなよ!」

マルスは何故かつんとして扉を開く。

「変にドギマギさせやがって! このバカ王子!」

聞かず、扉を閉めて。……背を預けると溜め息。

「……いっそ本気にしてくれればいいのに」

浮かない様子のマルスを振り返り、アイクは疑問符を浮かべた。
 
 
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