ふしぎなとびら、ひらかれて
視線を与えられたが、マリオは自室の扉の前で腕を組み、唸るばかりだった。
真面目な話、思いつくはずがない。
恋愛経験なんて今まで無かったようなもので、例えば朝飯に定番のパンを咥えて家を飛び出し、角でぶつかった女の子が実は自分が通う学校の転校生でつい運命を感じてしまった――なんて展開と段階を踏むのであれば、告白くらいムードが盛り上がってきたところですらすらと口から出てきそうなものではある。
……だが、今の状況といえば自分はまだ小学生なのに、就活しろと言われてるようなものである。面接の練習もしていないのに、だ。
周りは何とかやっているが、それだって相手がいるから意識が出来るのだ。見当たる相手といえば弟のルイージと大魔王のクッパくらい。無論、お断りだ。
……毎度毎度、あのトラブルメーカーは。
俺はノーマルだぞ。
「兄さん?」
色々と思い悩んだ末に辿り着いた結論は。
「……おいピーチ」