悪なるサンタの大作戦!
「ピチカ!」
この声は。……言わずもがな。
「ふわあっ!?」
不意を突くようにして現れたのはスピカである。仕事を終えたばかりなのか、服装はいつもと違うフォーマルなもので。これまた勢いよく、ピチカに抱き付く。
「っはあ……あったかい……」
仕事上がりの彼にとって、妹の温もりは極上の癒しであるようだ。
「も……にぃにったら」
「やめなよスピカ」
と、続けて食堂に入ってきたのはルーティ。
「もう十七なんだから」
「その突っ込み言い出したら切りがないけどな」
誰とまでは言わないが。ファルコはぽつりと突っ込み。
「それより、どうしたの?」
ピチカはやんわりとスピカを押し返す。実は、いくら重度のシスコンであるスピカといえど仕事が多忙では合間に会おうにも会えず、これで御無沙汰だったのだ。
「お仕事は?」
「ようやくひと段落したんだ。……それで、ピチカ」
スピカはふっと笑みを浮かべて続ける。微笑ましい会話のはずだった。
「クリスマス、何が欲しい? お兄ちゃんがサンタさんにお願いしといてやる」
あっ。
「……にぃに。今、サンタさんって」
「ん? ああ知り合いだから……、んだよ。揃いも揃って」
訪れる沈黙と注がれる視線にスピカは疑問符。一方のピチカはゆっくりと後退し。
「に……」
口を、開いた。
「にぃにが洗脳されたああっ!」