悪なるサンタの大作戦!



えっ。

「……ね?」

きっと、彼に悪気はないんだと思う。にこやかに首を傾げるダークウルフにスピカはすっかり固まってしまって。確かにそうかも、といった声も上がるのだから徐々に気持ちに焦りが出始める。例え、彼が冗談で言ったにしても――

「ああいうタイプは溜め込むぜぇ? そういう欲望……」

悪魔の囁き。いや、忠告か。

「……リーダー?」

ダークルカリオの耳打ちにスピカは思っていたよりも表情を固くさせてしまっていた。異変に気付いたダークウルフが不思議そうに手を伸ばしたが刹那。

「っや」

スピカは一歩、後退して。

「やっぱ今の無しいいいっ!」

――逃走。

「えっ! ちょ、リーダー!?」

そのまま食堂を飛び出すスピカにダークウルフは驚愕。どうやら彼、本当の意味で悪気はないまま、ただ単純に思ったことを発言しただけらしい。

「待ってくださいってばああ!」
「ぎゃー! こっち来んなあああ!」

……やれやれ。


「お?」

スピカが置いていった携帯がテーブルの上で振動している。ダークフォックスは手に取ると、ダークシャドウのメンツが覗き込む中、電話に出てみた。

「にぃに!」

その電話の相手は彼の妹であるピチカで。

「凄いの! あのね、サンタさん来てた! 本当にいたの!」

その声は凄く嬉しそうだった。リビングだかに集まって騒いでいるのか、色んな声が聞こえてくる。ダークフォックスは聞きながら、くすっと笑って。

「って、あれ……にぃにじゃないの?」
「ピチカちゃん。サンタさん、好きになった?」


――聖なる夜より。


「うん! だぁーい好きだよっ!」

大好きな貴方へ。……メリークリスマス。



end.
 
 
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