僕らの正義
ダークシャドウの基地が見えてきた。
……うん。
「ただ真っ黒に塗り潰しただけのパクリ屋敷とか思ってねえだろうな」
ぎくり。
「そんなことないよ! 厨二心擽る個性的な佇まいだと思う!」
「振り落とすぞ」
此方の屋敷より中庭を囲う塀が高いのは、彼らが影をこよなく愛すからだろうか。
中庭で子供たちが駆け回って遊んでいる様子もない。しんと静まり返って先程の強風など嘘かの如く風は無く、音はエンジンの音ただひとつだった。
空を見上げたところで太陽も月も窺えないのでは朝か夜かも分からない。
「着いたぞ」
スピカはこれでよく此方の世界と同じ規則性を保てるな。密かに感心を抱きながらダークウルフの言葉に頷き地面に足を付いた、次の瞬間だった。
ざわざわざわざわざわざわ。
「……どうした」
無数の棘が柔らかく肌を刺すような感覚。
息が詰まる。動けない。
――何が起こった?