僕らの正義
男は小さく目を開いた。が、やがて瞼を震わせながら窄めると。
……そのまま。
「ルー」
ぽつりと呼んだ。男の遺体はまだ少年の腕に抱かれている。
返事を寄越さないので不審に思った。覗くようにしてようやく気付く。
――少年の頬をなだらかに伝うひと粒の涙に。
彼は感受性が強かった。
任務の関係上、止むを得ず人を殺めることはあったがその度、思うのだと。
それが本当に正しい決断で、その人は救われたのか否か。
……互いの正義に触れてみて分かったことがある。
生かすのも殺すのも全てではない。
きっと。正義に本物など有りはしないのだと。