僕らの正義



「殺されたんじゃない」

スピカは黙って耳を傾ける。

「その人自らが望んだ死だった」


もしかして。


「何度も呼びかけた。何度も揺すった」

スピカはふいと目を逸らす。

「……死んだばかりの人の体ってさ、まだ温かいんだよ」

想像した。

「それがどんどんぬるくなって、やがては体温を失う。どんなに抱き締めても戻らない」


それは、とても残酷で。

寂しい光景だった。


「スピカ」

フォックスは言った。

「殺すってどういうことか、本当に分かってるのか?」
 
 
25/34ページ
スキ