兄の心配



ここはエックス邸を出てすぐの場所にある、庭。

「はあっ!」

リンクを除いた剣士組は現在、稽古中。

ロイとアイクの剣が激しい音を立ててぶつかり合う様は、稽古というよりもほぼ実戦に近い。ローナとピチカは揃ってきらきらとした瞳で見守って。

女の子といえば、如何なる理由であれ男子には傷付いてほしくないもの。だが、戦士である彼女達は別。ああして真剣な顔付きで戦う、その姿にこそ惹かれるものがあるのである……もちろんそれは、強ければ、強いほど。

「僕、ロイがたまに見せるあの表情とか、たまんないなぁ」
「アイクのあの力強さ! 剣の重みが伝わってくるようだよ……!」

ピチカとローナは口々に、お陰様でテンションMAXである。

「でも、マルスみたいにしなやかな剣捌きも気品があって好きなんだよねー!」
「ふっふっふ……メタナイトのあの迷いのない剣戟も負けてないぞぅ?」

これは好印象、なのか?

「あんなのの何処がいいんだか……」
「剣士はかっこいいってレッテルが貼られてるからなー」
「けっ。んなもん、野球部やサッカー部と大して変わんねーだろぉが」

草陰からこっそり覗いて見守りつつも、スピカはぶつぶつ。こいつ、どんなに見合った相手でも認めるつもりないな……言ってることは面白いが。

「……よしっ!」

不意に、ローナがぱんっと手を打った。まさか、あの四人の内の誰かを心に決めたんじゃないだろうな。ピチカもこくりと頷いた辺り、これはもしや――!


「屋敷に戻って再捜索開始!」
「はーいっ!」


あっれー!?

二人は誰かを選ぶことなく、屋敷の中へ。一応好印象、だったよな?

「ほれ見ろ。好きと憧れはちげぇんだよ」
「はあ……」

分からん。女子、分からん。
 
 
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