兄の心配
所変わって、ここは食堂である。
「お前、好きな奴とかいないのか」
詮索はよくない。が、兄としてそれは少し気になる。
なんたってこのX部隊の多くは男。……まあ、大抵があれだが、様々なタイプがいるのだから好みの男が一人くらいはいるだろう。いや、この際いてほしい。
こいつが女らしくなってくれるなら。
「む? んなもんいるわけないじゃないですか兄者」
ですよねー。よく考えたらこいつ、普段と何も変わってなかった。
「僕はまだまだ独り身満喫なうですぞ!」
にっと笑って朝食のトーストを頬張るローナに、こりゃ暫くは無理だろうなとネロは呆れ顔。ま、今はこんなのでもその内どうにか……なるのだろうか。
「つまり、ネロは僕に“恋”とやらをご所望で?」
「別にそこまで言ってないんだが……」
遠からず。
「うーん……」
ローナはサラダをフォークに突き刺して頬張り、そのフォークを口に咥えたまま考えていた。ネロは特に気にせず、味噌汁の入ったお椀に手を伸ばす。
「やってやろうじゃないか!」
……え?
「何をだよ」
「品定めだよ! よーく眺めてりゃ好みな男子くらいいるかも」
それは突然すぎる展開だった。
「ネロ!」
ローナはフォークはビシッと構え、向けて。
「僕が、僕の理想のお婿さんを連れてきてやんよ!」