兄の心配
テーブルの上のリモコンを手に取り、電源ボタンをポチッ。
「ったく、こんなもの見て」
「ピチカ!」
ネロを突き飛ばし、スピカ。
「大丈夫か!?」
「えっ?」
「この野郎っ、俺の大切なピチカに……一体何処に隠れやがった! 出てこい!」
そこへむくりと起き上がったネロ、きょろきょろと辺りを見回すスピカに暫し呆れたような視線を送った後、再び、リモコンの電源ボタンを押して。
「誰かっ、誰かー!」
「こんな所に人が来るわけないだろ……おら!」
「ぎゃー! わーっ!」
なんと、ローナとピチカは揃ってソファーで寛ぎながらテレビの昼ドラを見ていたのである。何やら過激と見て取れるシーンが展開されるとスピカは大袈裟に声を上げながらテレビの前に飛び出し、両手を広げてばたばた。
「ななな、何してんだバカ! 早く消せえっ!」
「お前が邪魔で消せねえんだよ!」
ここでも騒ぐ兄二人に、ローナとピチカは顔を見合わせてくすくす。
「ったく……」
スピカが退くと、ネロはもう一度リモコンを使いテレビの電源を切って。
「髪の匂いは分かるくせに、なんでテレビの声と妹の声を聞き間違えるんだよ」
「み、耳の方は調子が悪かっただけだっ」
顔を背けるスピカに、ネロは溜め息。
「……で? 理想のお婿さん探しはどうしたんだよ」