兄の心配



さて、何処に行ったものか。

少しぼうっとしていただけでこれだ。自業自得ではあるが、何となく不安が募る一方である。辺りを見回したところでやはり見つからず、ネロは溜め息。

「こっちだな」

と、スピカが先導するように歩きだした。

「入れ違ったらどうするんだよ。昼時だぞ」
「最近、TUBAMEってシャンプーに変えたらしいからな……」

ネロはすっとさりげなく距離を取って。

「……なんだよ」
「お前それストーカーだからな」
「い、妹と一緒に風呂入ってる奴に言われたくねえ!」
「入れさせられてんだよ!」


二人が騒ぎながら辿り着いた先はリビングだった。

顔を見合わせ、こくりと頷いて物陰へ。……声が聞こえる。いや、位置が悪いのか寧ろ声しか頼りになるものがなかったのだ。二人は息を潜めると耳を澄ませた。

「いや、やめて!」
「いいじゃねえか。俺とお前の仲だろ?」

聞こえてきた声にたらり、冷や汗。

「あんたのことなんか好きじゃない!」
「はっ、どうかな? これが欲しいクセに……」


これはまずい。


気付いた時には飛び出していた。

「ローナ!」

ネロは声を上げ、そして――
 
 
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