スマ学200のお題
71.現実
「そういえば、この前シュルクが貸してくれた本、面白かったよ」
「本当っ? 実はあれ、近々映画化されるんだ」
「へえ、それは楽しみだね!」
親しげに言葉を交わしながら階段を下るのはシュルクとマーク。
その二人の後ろをこっそり追うようにして二つの影。
「……どう思う?」
エス組といえばやたら優等生ばかりが集まった評価の高い有能クラス。加えて容姿端麗な生徒が大半を占めているので、評判を聞きつけた他校の生徒がわざわざ足を運び、告白を持ちかけるといったケースも少なくない。
それはさておき。
「……犯されそう」
何を言っているんだか。影の正体はカービィとロイである。
「だよねぇ。マークは華奢だしシュルクは気弱そう」
「痴漢されても言い出せなくてそのままトイレに連れ込まれるパターンだな」
うんうんと頷いて同意、二人が廊下の角を曲がったところで足音を殺しながら段を飛ばし飛ばしで駆け下りる。それから、角を盾に覗き込んで。
「試してみる?」
昼休み。どうせ次の授業は自習だし。
カービィとロイは顔を見合わせ頷くと同じタイミングで飛び出した。とん、とんと跳ねるように、だけど音だけは最小限に。
この手の悪さは慣れっこだ。伸ばした手で背後から。口を塞いで――
次の瞬間だった。
ふっと双方の視線が向いたかと思えばマークはカービィの腕を手刀で落とし、その腕を斜め下に引いて。一方でシュルクはロイの腕を拳の甲で打ち上げると振り向きざま低姿勢での足払いを仕掛けた。その間、約二秒。
「うわっ!」
声を揃えてカービィは床にダイブ、ロイは尻餅。
肝心のマークとシュルクは反射的に行ったものらしく疑問符。
「どうしたんだ?」
「さあ……」
口で語るほど現実は甘くない。